土に還すのではなく、暗いコンクリートの穴の中に閉じ込めるやり方は、現代のお墓の問題点であるとも言えます。現代のお墓は絶対に土に還らない仕組みになっています。コンクリートで固められた納骨室(カロート)の中に遺骨の入った陶器の骨壺を納めるやり方では、100年経過しても中の遺骨の形はそのまま残ってしまうことになります。土葬で埋葬された遺体は、肉体はもちろんのこと、骨まで土に還っていることが多く、骨も本来は土に還るべき存在であることが分かります。
大切な人の遺骨だから、いつまでも永遠に綺麗な骨壺に納めて丈夫で綺麗なお墓に納めたいという風潮が一般化した現代ですが、そもそも遺骨をいつまでも残すという考え方が間違いなのかもしれません。お墓や遺骨がいくら長く残り続けても、人口減少社会では残された遺族や後継者がいなくなってしまうことが少なくありません。
お墓は、本来、故人を土に還すための場所であったはず。決して遺骨の保管庫ではありません。お墓の底がコンクリートで出来ているなんていうやり方は、すでに時代に合わなくなってきているとも言えます。永遠に土に還ることのない遺骨を安置し続けるために永遠に管理料を払い続けることの矛盾にもうそろそろ気付くべきなのかもしれません。それにいち早く気づいた人たちは、今どんどん墓じまいを始めています。土葬では100年経過してもまだ遺骨が残っていることがありますが、自然の中で散骨すれば10年で遺骨は確実に土に還ります。自然の中では風雨の影響を受け、落ち葉や枯れ枝などが積もる度に、昆虫や微生物の分解が進み、土に還っていくことになります。これが本来の故人の弔い方なのかもしれません。
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